こちらの記事では、「五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」(秀和システム,2016)のダイジェストをお届けします。
◎魚について、詳しく知る事を諦めよう
【理由】膨大な知識量が必要となり、完璧に身につけるのはプロでも難しいから
●最初に諦めて下さい!
いきなりですが、皆さん、諦めて下さい。
魚という食材は、本1冊読めば分かる程、簡単な食材ではありません!
これは、魚の種類が非常に多く、しかも同じ魚でも獲れる場所や方法によって扱われ方が異なり、しかも調理方法が様々である、などが理由です。肉で言う、鳥、豚、牛は、3種類だけでも奥が深いと思います。それが、魚の場合は、マグロ、カツオ、ブリ、イワシ、サンマ、アジ・・・これだけでも日本には数百種類あり、それぞれが異なっています。さらには、アジを刺身で食べる時はこう、干物ではこう、そのような話はキリがありません。
よく「美味しい魚の見分け方を知りたい」という声を聞きますが、厳密に言うと魚はすべて違い、数百種類の魚それぞれについて知る必要があります。それらをすべて知るのは、魚を扱うプロでも相当難しい事なのです。ですから、美味しい魚を食べる事が目的の一般消費者の方であれば、
魚という食材について、多くの知識を身につけるのは最初に諦めましょう。
これが、この本の第一の方針です。
「だったら本の代金返せ!」と思われた方、少しお待ちください。何も魚の事を知らずとも美味しい魚は食べられるのです。
この本で、魚そのものの知識を諦めるのは、どうしても局所的で細々した話になってしまうからです。美味しい魚を食べるために抑えるべきは、この細々した枝葉の部分ではありません。本当に抑えるべきは、大枠の根っこの部分だと私は思います。
では、根っこの部分とは、何でしょうか。
●美味しい魚の根っこを探りにタイムスリップ
それを探るために昔の話をすると、一昔前は、漁港で獲れた魚を売り歩く行商がいて、町には個人で営む魚屋が多くありました。そして、その方々は、自分の権限で魚を売る「魚のスペシャリスト」でした。私たち消費者は、その「魚のスペシャリスト」から直接、魚を買う事ができました。だから、魚の事を知らなくても「今日は、これがオススメだよ。」という魚さえ買っていれば、美味しい魚を食べる事ができたのです。
このように、一昔前は、個々の消費者が魚の事を知らなくても、良い行商や良い魚屋さえ知っていれば、美味しい魚を食べる事が出来ました。
●今も昔も魚を提供するのは「人」
一方、現在はどうでしょう。魚を買うとすればスーパー、食べるとすれば飲食店、そこにいるのはアルバイトの人、という状況です。「魚のスペシャリスト」と直接対面する機会が無くなり、私たちは自分で魚を見極めなければならなくなりました。
しかし、本当にそうでしょうか。現在においても、魚を提供しているのは「人」であり、それは昔と変わりません。つまり、美味しい魚を提供する人であれば、マグロでも、アジでも、タイでも、美味しい魚を提供するのです。
このように、美味しい魚の根っこは「人」にあります。
確かに、現在では「魚のスペシャリスト」と直接的に接する機会は無くなったかもしれません。しかし、「魚のスペシャリスト」の技術や心遣いは、お店や商品、流通の至る所に現れています。それらを見極め、お店や商品を選べば、美味しい魚が食べられるのです。
魚そのものよりも、美味しい魚を提供する「人」を見極める
これが、この本の第二の方針です。
●まずは、大枠を理解しよう
もちろん、必要に応じて魚そのものに着目する事もありますが、本書では、難しい事をなるべく省き、細々した事でなく大枠を理解する事を目指します。そのため、定量的というよりは定性的、また、厳密に言うと違う事もあるかと思いますが、その点をご了承いただき、まずは大枠を理解しましょう。
そのために、本書では具体的に、店のメニュー、店先や店内の様子、商品の見せ方などの見るべきポイントを伝授したいと思います。また、それらを応用した、ちょっとした工夫で魚が美味しくなるテクニック、についても述べていきたいと思います。
※出典
「五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」(秀和システム,2016)
筆者プロフィール:
さかなのNEWS編集部 魚、漁業、水産業のことを「広く」「深く」「ゆるく」伝えています。