「冷凍の魚」と聞くと、多くの人が「鮮度が落ちる」「生魚には敵わない」といったイメージを持つのではないでしょうか?
冷凍食品は便利だけど、生の刺身や市場で買う新鮮な魚にはかなわない……。
そんな常識が、いま大きく覆されつつあります。
実は、最新の冷凍技術の進化によって「生魚に匹敵するほど美味しい冷凍魚」が登場し、これまでの魚の流通や食文化を変えようとしています。
「美味しい冷凍魚」とは一体なんなのか。
どのような技術革新が、魚の価値を高めているのか。
魚を美味しく楽しめる、最新の冷凍技術をご紹介します。
進化する冷凍技術!最新の冷凍技術とは?
従来の冷凍技術では、魚を凍らせる際に細胞が破壊され、解凍時に旨味や水分が流れ出てしまうのが課題でした。しかし、近年の冷凍技術の進化により、生魚のような食感と旨味を保ったまま凍結・保存できる技術が次々と開発されています。
ここでは、現在注目されている3つの最先端冷凍技術を紹介します。
1)プロトン凍結… 磁力×電磁波×冷風による急速凍結

プロトン凍結とは、磁力・電磁波・冷気を組み合わせ、一気に凍結させる技術です。
従来の冷凍技術とは異なり、急速冷凍の過程で磁場を利用し、氷の結晶を小さくすることで、細胞が破壊されにくくなるのが特徴です。
このようなメリットがあり、例えば品質劣化が早く流通が難しかった生シラスといった魚も獲れたての状態で保存し、解凍後も本来の味のまま楽しめるようになりました。
これにより、地域を問わず美味しい魚を楽しめる機会が広がりました。
2)3D凍結…均一冷却で食感と品質を維持

3D凍結は、従来の急速冷凍技術とは異なり、冷気を立体的に循環させ、食品全体を均一に冷却する技術です。
従来の冷凍方法では、表面から内部に向かって冷えていくため、冷却ムラが発生しやすく、部分的に冷凍焼けを起こすことがありました。しかし、3D凍結では、食品の隅々まで均等に冷却できるため、食感の劣化を最小限に抑えられるのが特徴です。
この技術は、大量に冷凍する必要があるスーパーや飲食店にとって、鮮度の高い魚を安定的に提供できるメリットがあります。
3)CAS凍結(セル・アライブ・システム)…過冷却で急速凍結

CAS凍結(セル・アライブ・システム)は、細胞が凍結する際にできる氷の結晶の成長を抑えることで、解凍時のドリップを最小限にし、鮮度を保持する特殊な冷凍技術です。
通常、冷凍時には水分が凍って大きな氷の結晶ができ、それが細胞を破壊します。しかし、CAS凍結では、特殊な振動を与えることで氷の結晶を極限まで小さくし、細胞を壊さずに冷凍できるのがポイントです。
この技術は、特に刺身用のマグロや高級魚の冷凍に活用されており、世界中に日本の新鮮な魚を届けることを可能にしました。
4)氷温熟成冷凍…旨味を引き出す革新的な冷凍技術

山陰地方伝統の「寒仕込み製法」をもとに開発された氷温熟成という技術があります。
鳥取県米子市にある株式会社ダイマツで、世界に先駆け1978年から導入された技術です。
魚が凍り始める直前の「氷温帯」で一定期間熟成させ、その後冷凍。
鮮度を保つだけでなく、旨味を引き出すことを可能にしました。
冷凍によって、いつでもどこでも美味しい魚を
冷凍技術の進化により、最も美味しい状態の魚を、全国どこでも手軽に楽しめるようになってきました。
最新の冷凍技術によって、私たちの食卓に並ぶ魚の選択肢も広がり、どこにいても「最高の状態で味わえる魚」を楽しめる未来がやってきています。