春は、様々な魚が美味しい季節。巷にあふれる魚の種類も豊富になります。そのような中でも、春告魚(はるつげうお)と呼ばれている魚の1つがニシンです。
今回は、ニシン漁が盛んな北海道出身の水産系シンガーソングライター、牧野くみさんからニシンについて記事を書いていただきました。
春に産卵のため接岸するニシンは、「春告魚(はるつげうお)」と呼ばれています。
かつてニシンが豊漁だった時代、北海道の日本海側ではその収益は莫大で「ニシン御殿」と呼ばれる屋敷が本当に建ち並んでいました。さらに、豊富に獲れたニシンは、食用だけでは余るので肥料にも利用されていたほどです。
その頃は、「ヤン衆」と呼ばれる労働者が出稼ぎに来てニシン漁に従事し、ニシン漁が盛んな北海道の港は賑わっていました。
さて、北海道に古くから伝わる「ソーラン節」は、ニシン漁をテーマにした歌で、ヤン衆がソーラン節の原型を本州から北海道に伝えたとされています。
実は、この「ソーラン節」で有名な「沖揚げ音頭」は、全部で4編の歌で構成されており、ニシン漁の作業過程を表しています。
歌は、漁の最中にも歌われていたそうですが、寒い夜に行われるニシン漁は大変危険なため、居眠りをしないようにする、という意味があったそうです。さらに、眠くならないために、わざとふざけた内容や下ネタが歌詞に盛り込まれていたのだそうです。
ニシン漁はその後衰退しましたが、時を経てソーラン節は様々な形で現在に伝わっています。
例えば、1992年の北海道札幌では、高知のよさこい祭りに感銘を受けた学生による「YOSAKOIソーラン祭り」が開催され、今日にも受け継がれています。
よさこい祭りの「鳴子」という道具を使いソーラン節のフレーズで踊る、2つの地域の伝統のコラボレーションによるイベントです。
コロナ禍により2020年、2021年は中止でしたが、2022年は今のところ開催される予定とのことです。(2022年3月時点の情報。参考:YOSAKOIソーラン祭り公式サイト)
また、一時衰退していたニシンですが、北海道での漁獲量は近年増加傾向にあるようです。
形を変えながらも後世に文化を伝えるYOSAKOIソーラン祭りと共に、限りある資源も後世に残せるよう、みんなで大切していけたら良いなと思います。
筆者プロフィール:
水産系シンガーソングライター 牧野くみ
魚食×アートの可能性を探る。ととけん1級所持。
2019年、鮭をテーマに3曲収録した「あの川を目指して」自主制作リリース。