近年、水産資源の減少が深刻な問題となっています。そんな中、日本の海にはまだ知られていない、活用されてこなかった「未利用魚・低利用魚」が多く存在しています。そのひとつが、深海にひっそりと暮らす「ドスイカ」です。
深海に潜む、知る人ぞ知るイカ
ドスイカは水深300メートル前後の深海に生息するイカで、北海道や三陸以北、日本海の深海域などで確認されています。
赤い見た目で表皮がとても柔らかく、簡単に皮が破れてしまうのが特徴。
見た目のインパクトや身の柔らかさが災いし、これまでは市場に流通することはほとんどありませんでした。
水分が多く、傷みやすいため、漁で混獲されても廃棄されてしまうことが多く、「低利用魚」として扱われてきたのが現状です。
スルメイカの代替に?注目集まるドスイカの魅力

そんなドスイカに注目し、研究を進めているのが、国立研究開発法人 水産研究・教育機構です。
深刻なスルメイカの不漁を受け、ドスイカの資源量調査や加工品の開発に取り組んでいます。
ドスイカはまだ分からないことも多いイカですが、資源量は豊富とされ、価格も安価。
これまで漁師の間や港の地元でひっそり食べられていた「知る人ぞ知る味」です。
スルメに加工すれば旨味がぎゅっと凝縮され、噛むほどに美味しさが広がります。
また、柔らかい身は天ぷらや煮物などの加熱調理にもぴったり。水分の多さを逆手にとった加工品づくりにも適しており、業務用や家庭向けの冷凍食品としての展開も期待されています。
ドスイカが切り拓く、水産業の持続可能性
いま、ドスイカのような低利用魚を見直す動きが進み始めています。
未利用だった資源に新たな価値を見出すことは、フードロスの削減や水産業の持続可能性に直結する、大きな一歩です。
今後、さらに研究や商品化が進めば、私たちの食卓にもさまざまな形で登場するかもしれません。
スーパーや飲食店で見かけたら、ぜひ一度その味を楽しんでみてください。
ドスイカが、あなたにとっての「新しい定番」になる日も、そう遠くないかもしれません。