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太宰治に物申す!カニの栄養とコスパ最高な「トゲクリガニ」にまつわるお話

 カニ好きの皆様こんにちは!今が旬のトゲクリガニはもう召し上がりましたか??

トゲクリガニ

 主に青森で獲れるトゲクリガニは4月下旬~5月下旬が旬の、毛ガニと同じクリガニ科のカニです。「花見ガニ」とも呼ばれているそうです。毛ガニに比べると小ぶりで、トゲと殻が柔らかいような気がします。そして何より毛ガニよりリーズナブルなのが魅力です!
 

 青森出身の文豪・太宰治の作品「津軽」に、トゲクリガニと馴染み深いシーンがあります。

太宰治著「津軽」

 私は蟹が好きなのである。どうしてだか好きなのである。蟹、蝦、しやこ、何の養分にもならないやうな食べものばかり好きなのである。

中略

 眼前に好物の蟹の山を眺めて夜の更けるまで飲みつづけた。N君の小柄でハキハキした奥さんは、私が蟹の山を眺めて楽しんでゐるばかりで一向に手を出さないのを見てとり、これは蟹をむいてたべるのを大儀がつてゐるのに違ひないとお思ひになつた様子で、ご自分でせつせと蟹を器用にむいて、その白い美しい肉をそれぞれの蟹の甲羅につめて、フルウツ何とかといふ、あの、果物の原形を保持したままの香り高い涼しげな水菓子みたいな体裁にして、いくつもいくつも私にすすめた。おそらくは、けさ、この蟹田浜からあがつたばかりの蟹なのであらう。

[太宰治, 1951]

 太宰治は「斜陽」や「人間失格」等に代表される人間の弱さやダメな部分の表現と、スキャンダラスな人生の印象が強く、そこが時代を経ても人を惹きつけている理由の一つだと思うと同時に、この「津軽」はユーモアと地元愛に溢れていて、太宰の新たな魅力が垣間見れる作品だと私は感じています。

 ただ、「蟹、蝦、しやこ、何の養分にもならないやうな食べものばかり好きなのである。」という箇所に関しては、これらはみんな「アスタキサンチン」が豊富です!!!と僭越ながら申し上げたいと思っています!!(ちなみに、アスタキサンチンとは、甲殻類などに含まれアンチエイジングなどに効果的とされているる抗酸化物質です。)

 「津軽」ではカニのみならず津軽地方の豊かな海の幸が描かれており、魚介類好きな皆様はわくわくすると思うので以下一部を引用します。

海浜のすぐ近くに網がいくつも立てられてゐて、蟹をはじめ、イカ、カレヒ、サバ、イワシ、鱈、アンカウ、さまざまの魚が四季を通じて容易に捕獲できる様子である。この町では、いまも昔と変らず、毎朝、さかなやがリヤカーにさかなを一ぱい積んで、イカにサバだぢやあ、アンカウにアオバだぢやあ、スズキにホツケだぢやあ、と怒つてゐるやうな大声で叫んで、売り歩いてゐるのである。

中略

津軽では、あたらしいハタハタを、そのまま薄醤油で煮て片端から食べて、二十匹三十匹を平気でたひらげる人は決して珍らしくない。ハタハタの会などがあつて、一ばん多く食べた人には賞品、などといふ話もしばしば聞いた。(中略)いづれにもせよ、このハタハタを食べる事は、津軽の冬の炉辺のたのしみの一つであるといふ事には間違ひない。

[太宰治, 1951]

 ということで太宰に想いを馳せていたところ、先日東京・御徒町の「吉池」という魚介類専門スーパーでトゲクリガニをタイミングよくゲットできました!

 二杯+小さい一杯おまけの計三杯で、合わせて980円でした!

 カニを茹でるのは人生で初めてで、帰宅して早速どきどきわくわくしながら鍋を用意して茹でました。

クリガニを茹でてみました

 カニを丸ごと一杯食べるという旅館や外食のような贅沢な気分を自宅にいながら味わえるので、コロナ禍で自粛中に楽しめるエンターテイメントとしてもおすすめだと思いました!

 タラバガニや毛ガニやブランドズワイガニをもし茹でるとしたら何か特別な日やお祝い事に・・・とめっちゃ気合が入ったり緊張したりするかと思いますが、トゲクリガニはこのリーズナブルさゆえ気軽にトライできるのではないでしょうか。

 気になる食レポは・・・。まず、「茹でたてのカニそのものってこんなにおいしいんだ!!」というのが一番の感想です。「ほかほかでふわふわしてる・・・」と感銘を受けました。温度を感じる出来たてのものって幸せですね。

 カニを食べる時に無言になるという経験は皆様一度はあるのではないでしょうか。太宰はトゲクリガニを食す際にお酒が必須だったようですが、私はもう手がべたべたになってお酒を手に取る余裕もなく、ひたすら無言で目の前のカニを食べることに集中していました。ふと、カニを食べるという行為は味だけではなく、日々の嫌なことや不安をその時だけは忘れて没頭できることも太宰にとって魅力だったのではないかと思いました。そんなことを考えながら、少し落ち着いた頃に甲羅に日本酒を注いでみたら格別でした。

 ぜひ旬のトゲクリガニ、お試しになってみてください!

参考文献 「津軽」太宰治
https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/2282_15074.html

筆者プロフィール:
水産系シンガーソングライター 牧野くみ
魚食×アートの可能性を探る。ととけん1級所持。

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この記事を書いた人

さかなのNEWS編集部。魚、漁業、水産業のことを「広く」「深く」「ゆるく」伝えています。

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